- AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUはWindows 11のTPM・CPU要件回避の公式レジストリキー
- 24H2・25H2でも回避可能だが追加のレジストリ操作が必要になる場合がある
- Rufusやレジストリ編集で古いPCでもWindows 11をインストールできる
Windows 11にアップグレードしたいけれど、TPM 2.0やCPU要件を満たしていないPCをお持ちの方、諦める必要はありません。Microsoftが公式に提供しているAllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUというレジストリキーを使えば、システム要件を回避してWindows 11をインストールできます。
本記事では、最新の24H2・25H2バージョンにも対応した回避方法を、初心者の方にもわかりやすく解説します。MoSetupが見つからない場合の対処法や、Rufusを使った簡単な方法、クリーンインストールでの手順まで、あなたのPCに合った方法が必ず見つかります。
AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUとは?Windows 11システム要件回避の公式手段
AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUは、Microsoftが公式に文書化したレジストリキーで、Windows 11のインストール時にTPM 2.0とCPUの要件チェックを回避できる仕組みです。このレジストリ値を1に設定することで、Windows 11のセットアッププログラムが古いCPUやTPM 1.2しか搭載していないPCでもインストールを許可するようになります。
2021年のWindows 11リリース時、多くのユーザーが第7世代以前のIntel CPUやAMD Ryzen 1000シリーズ以前のプロセッサを搭載したPCで、システム要件を満たさないというエラーに直面しました。こうした状況に対応するため、Microsoftは2021年10月に公式サポートページでこのレジストリキーの存在を公表しました。
上記のグラフから分かるように、TPM 2.0を搭載しているPCは全体の約45%にとどまり、CPUモデルの要件を満たすPCも52%程度です。つまり、半数近くのPCがWindows 11の標準インストールでは除外されてしまうという状況があります。この問題を解決するのがAllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUレジストリキーなのです。
Windows 11のシステム要件とは?TPM 2.0・CPU制限の詳細
Windows 11が要求する主なシステム要件を正確に理解しておくことは、回避方法を選ぶ上で重要です。Microsoftは以下の最小要件を設定しています。
| 要件項目 | 最小要件 | 回避可能性 |
|---|---|---|
| プロセッサ | 1GHz以上、2コア以上の64ビット対応CPU(Intel第8世代以降、AMD Ryzen 2000シリーズ以降) | ✓ 回避可能 |
| TPM | TPM 2.0(トラステッドプラットフォームモジュール バージョン2.0) | ✓ 回避可能(1.2でも可) |
| セキュアブート | UEFI、セキュアブート対応 | ✓ 回避可能 |
| RAM | 4GB以上 | ✓ 回避可能 |
| ストレージ | 64GB以上 | ✓ 回避可能 |
| CPU命令セット(24H2以降) | SSE4.2、POPCNT命令 | ✗ 回避不可(ハードウェア制限) |
この表が示すように、ほとんどの要件はレジストリやツールを使って回避できます。ただし、Windows 11 24H2以降で追加されたPOPCNT命令の要件だけは回避できません。これは約16年以上前のCPU(2008年以前のCore 2 Duoなど)に影響する、真のハードウェア制限です。
TPM 2.0は、暗号化キーの安全な保管やWindowsのセキュリティ機能(BitLocker、Windows Helloなど)を強化するためのチップです。多くの2016年以降のPCにはTPM 2.0が搭載されていますが、それ以前のPCではTPM 1.2しか搭載されていないか、全く搭載されていない場合があります。AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUを使えば、TPM 1.2のみのPCでもWindows 11をインストール可能になります。
MoSetupレジストリキーの作成手順:AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUの設定方法
Windows 10から直接Windows 11にアップグレードする場合、最も確実な方法はHKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\Setup\MoSetupというレジストリパスにAllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUキーを作成することです。ここでは具体的な手順を解説します。
手順1:レジストリエディタを起動する
Windowsキー + Rを押して「ファイル名を指定して実行」を開き、regeditと入力してEnterキーを押します。ユーザーアカウント制御(UAC)のダイアログが表示されたら「はい」をクリックしてください。
手順2:MoSetupキーを作成する
レジストリエディタの左側のツリーで、以下のパスに移動します。
HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\Setup
「Setup」キーを右クリックし、「新規」→「キー」を選択します。新しく作成されたキーの名前をMoSetupに変更してください。もし既にMoSetupキーが存在する場合は、この手順はスキップできます。
手順3:AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPU値を作成する
作成した(または既存の)MoSetupキーを選択した状態で、右側の空白部分を右クリックし、「新規」→「DWORD(32ビット)値」を選択します。新しい値の名前をAllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUと入力します(大文字・小文字の区別に注意してください)。
作成したAllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPU値をダブルクリックし、値のデータを1に設定して「OK」をクリックします。これで設定は完了です。
上記のフローチャートは、MoSetup作成の全体的な流れを視覚化したものです。MoSetupキーが見つからない場合でも、新規作成することで問題なくレジストリ設定を完了できます。実際、MoSetupキーはデフォルトでは存在しないため、多くのユーザーが自分で作成する必要があります。
レジストリ編集が完了したら、Windows 11のISOファイルをマウント(右クリック→マウント)し、setup.exeを実行してアップグレードを開始します。この方法により、TPM 2.0とCPUモデルのチェックが回避され、Windows 10から直接Windows 11にアップグレードできるようになります。
Windows 11 24H2・25H2でのAllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPU活用法
2024年10月にリリースされたWindows 11 24H2、そして2025年9月にリリースされた25H2では、システム要件の回避方法が若干変更されています。AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPU単体では不十分なケースが増えており、追加のレジストリ設定が必要になる場合があります。
24H2以降のバージョンでは、Microsoftがハードウェアチェックのロジックを強化し、従来の回避方法の一部が機能しなくなりました。特に、ISOをマウントしてsetup.exeを実行する「アップグレード」方式では、AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUだけでなく、以下の追加レジストリ設定が推奨されます。
reg.exe delete "HKLM\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion\AppCompatFlags\CompatMarkers" /f
reg.exe delete "HKLM\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion\AppCompatFlags\Shared" /f
reg.exe delete "HKLM\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion\AppCompatFlags\TargetVersionUpgradeExperienceIndicators" /f
reg.exe add "HKLM\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion\AppCompatFlags\HwReqChk" /f /v HwReqChkVars /t REG_MULTI_SZ /s , /d "SQ_SecureBootCapable=TRUE,SQ_SecureBootEnabled=TRUE,SQ_TpmVersion=2,SQ_RamMB=8192,"
reg.exe add "HKLM\SYSTEM\Setup\MoSetup" /f /v AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPU /t REG_DWORD /d 1
これらのコマンドは、管理者権限のコマンドプロンプトで実行します。最初の3行は以前のアップグレード試行の履歴を削除し、4行目はハードウェアチェックの結果を偽装し、5行目で従来のAllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUを設定します。この一連の操作により、24H2・25H2でも古いPCへのアップグレードが可能になります。
上記のグラフが示すように、Windows 11のバージョンが新しくなるにつれて、システム要件回避の難易度は上昇傾向にあります。特に24H2以降は必要なレジストリ設定が大幅に増加しており、より複雑な手順が求められます。
24H2と25H2で重要な変更点として、SSE4.2のPOPCNT命令が必須になったことが挙げられます。これは2008年以前のCPU(第1世代Core 2 Duo以前など)では完全に動作しないハードウェア制限です。レジストリ設定では回避できないため、該当するCPUの場合は23H2以前のバージョンを使用するか、ハードウェアをアップグレードする必要があります。
MoSetupが見つからない場合の対処法:新規作成の詳細手順
「HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\Setup\MoSetup」を探しても見つからないという声が多く寄せられています。これは正常な状態です。MoSetupキーはWindows 10のデフォルト設定には含まれておらず、ユーザー自身が作成する必要があります。
MoSetupキーが見つからない場合の新規作成手順は以下の通りです。
- レジストリエディタを管理者権限で起動:Windowsキー + Rを押し、regeditと入力してCtrl + Shift + Enterを押すと管理者権限で起動できます
- Setupキーに移動:HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\Setupまでツリーを展開します
- Setupキーを右クリック:「Setup」キーの上で右クリックし、コンテキストメニューから「新規」→「キー」を選択します
- MoSetupと命名:作成された「新しいキー #1」をMoSetupにリネームします(大文字・小文字の区別は重要です)
- DWORD値を作成:MoSetupキーを選択した状態で、右ペインの空白を右クリックし「新規」→「DWORD(32ビット)値」を選択します
- AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUと命名:作成された値を正確にAllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUにリネームします
- 値を1に設定:ダブルクリックして値のデータを1に変更し、OKをクリックします
この手順により、MoSetupキーが存在しない環境でも確実に作成できます。一部のユーザーから「MoSetupを作成しようとすると『既に存在します』というエラーが出るのに見つからない」という報告がありますが、これはレジストリエディタの表示更新の問題である可能性があります。F5キーを押して表示を更新するか、一度レジストリエディタを再起動してみてください。
BypassTPMCheckでクリーンインストール:HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\Setup\LabConfigの活用
Windows 11をクリーンインストールする場合は、LabConfigというレジストリキーを使った方法が最も効果的です。この方法は、インストール中にShift + F10を押してコマンドプロンプトを開き、レジストリエディタで設定を追加するという流れになります。
LabConfigを使った方法は、MoSetupよりも広範囲のチェックを回避できるという利点があります。TPM、セキュアブート、RAM、ストレージ、CPUのすべてのチェックを個別に無効化できるため、非常に柔軟性が高い手法です。
クリーンインストールでのBypassTPMCheck設定手順
- Windows 11インストールメディアから起動:USBメモリまたはDVDからPCを起動し、言語選択画面まで進みます
- コマンドプロンプトを起動:Shift + F10キーを同時に押してコマンドプロンプトを開きます
- レジストリエディタを起動:コマンドプロンプトに「regedit」と入力してEnterを押します
- LabConfigキーを作成:HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\Setupに移動し、Setupを右クリックして「新規」→「キー」を選択、「LabConfig」と命名します
- 必要な値を作成:LabConfigキーを選択し、以下のDWORD(32ビット)値を作成します
| 値の名前 | 種類 | データ | 回避する要件 |
|---|---|---|---|
| BypassTPMCheck | REG_DWORD | 1 | TPM 2.0チェック |
| BypassSecureBootCheck | REG_DWORD | 1 | セキュアブートチェック |
| BypassRAMCheck | REG_DWORD | 1 | RAM容量チェック |
| BypassStorageCheck | REG_DWORD | 1 | ストレージ容量チェック |
| BypassCPUCheck | REG_DWORD | 1 | CPUモデルチェック |
すべての値を作成して1に設定したら、レジストリエディタとコマンドプロンプトを閉じ、インストールを続行します。「このPCではWindows 11を実行できません」というエラーが出た場合は、左上の戻るボタンをクリックしてインストール画面を再表示すると、エラーが消えて先に進めるようになります。
この方法の利点は、すべてのハードウェアチェックを一括で回避できる点です。TPMが全く搭載されていないPCでも、この方法なら確実にWindows 11をインストールできます。ただし、24H2以降のPOPCNT命令の要件だけは回避できないため、対応CPUかどうかの事前確認は必要です。
Windows 11 TPM回避 Rufusの使い方:最も簡単な方法
Rufusは、Windows 11のインストールメディアを作成する際に、システム要件チェックを自動的に回避できる無料ツールです。レジストリ編集が不安な方や、できるだけ簡単にWindows 11をインストールしたい方に最適な方法と言えます。
Rufusの最新バージョン(4.6以降)では、Windows 11のISOファイルを選択すると、「Windows User Experience」という設定画面が自動的に表示され、そこで各種チェックを回避するオプションを選択できます。
Rufusを使ったTPM回避手順
- Rufusをダウンロード:公式サイト(https://rufus.ie/)から最新版をダウンロードします
- Windows 11 ISOを用意:Microsoftの公式サイトからWindows 11のISOファイルをダウンロードしておきます
- USBメモリを接続:16GB以上の容量があるUSBメモリをPCに接続します(データは全て消去されます)
- Rufusを起動:ダウンロードしたRufusをダブルクリックで起動します(インストール不要)
- ISOを選択:「ブートの種類」で「ディスクまたはISOイメージ」を選択し、「選択」ボタンからWindows 11のISOファイルを指定します
- スタートをクリック:設定を確認して「スタート」ボタンをクリックします
- カスタマイズ画面で設定:「Windows User Experience」画面が表示されたら、以下のオプションにチェックを入れます
- 「Remove requirement for 4GB+ RAM, Secure Boot, and TPM 2.0」(4GB以上のRAM、セキュアブート、TPM 2.0の要件を削除)
- 「Remove requirement for an online Microsoft account」(オンラインMicrosoftアカウントの要件を削除)
- 「Disable data collection (Skip privacy questions)」(データ収集を無効化)
上記のレーダーチャートが示すように、Rufus方式は簡単さとスピードで優れており、初心者にも扱いやすい方法です。一方、レジストリ編集方式は柔軟性が高く、特定の要件だけを回避したい場合や、既存のWindows 10からアップグレードする場合に適しています。
Rufusで作成したUSBメディアからPCを起動すると、通常のWindows 11インストールと同じ画面が表示されますが、ハードウェアチェックが自動的にスキップされます。インストールアシスタントを使ったアップグレードにも対応しており、Windows 10が起動した状態でUSBメモリのsetup.exeを実行することで、データを保持したままアップグレードできます。
システム要件回避のリスクと注意点:知っておくべき重要情報
AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUやその他の回避方法を使ってWindows 11をインストールすることは技術的に可能ですが、いくつかの重要なリスクと制限があることを理解しておく必要があります。
Microsoftのサポート対象外になる
Microsoftは公式に、システム要件を満たさないデバイスでのWindows 11インストールをサポート対象外としています。これは、将来的にWindows Updateが提供されない可能性や、技術サポートを受けられない可能性があることを意味します。実際のところ、2025年12月時点では、要件を満たさないPCでも通常通りWindows Updateは動作していますが、将来の保証はありません。
セキュリティ機能の低下
TPM 2.0とセキュアブートは、Windows 11のセキュリティアーキテクチャの重要な要素です。これらを回避してインストールした場合、以下のセキュリティ機能が制限または無効になります。
- BitLocker暗号化:TPM 2.0なしでも使用可能ですが、起動時にパスワード入力が必要になり、自動解除機能が使えません
- Windows Hello:生体認証の安全性が低下します
- 仮想化ベースのセキュリティ(VBS):Credential Guardなどの高度な保護機能が動作しない可能性があります
- ブートキット・ルートキット耐性:セキュアブートがないと、ブート段階でのマルウェア侵入を検知できません
上記のグラフが示すように、TPMを回避した環境では、総合的なセキュリティスコアが大幅に低下します。特に企業環境や機密データを扱う場合は、TPM 2.0搭載の正規対応PCへの移行を強く推奨します。
互換性問題の可能性
一部のゲームタイトルやエンタープライズアプリケーションは、TPM 2.0やセキュアブートの存在を前提に設計されています。2024年以降、アンチチート機能を搭載したオンラインゲームの中には、セキュアブートが無効な環境での起動を拒否するものが増えています。ValorantやApex Legendsなどの人気タイトルでは、セキュリティ要件のチェックが強化されており、回避環境では動作しない可能性があります。
推奨される使用シナリオ
システム要件回避は、以下のような限定的なシナリオでの使用を推奨します。
- テスト・検証環境:新機能の試用や開発環境としての使用
- オフライン専用PC:インターネットに接続しないスタンドアロン環境
- 短期的な使用:新しいハードウェアを購入するまでの一時的な対処
- 学習目的:Windows 11の機能を学ぶための教育環境
日常的にインターネットに接続する環境や、業務で使用するPCでは、可能な限りシステム要件を満たしたハードウェアへの移行を検討してください。
まとめ:AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUを活用したWindows 11インストール
AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUレジストリキーを使えば、TPM 2.0やCPU要件を満たさないPCでもWindows 11をインストールできます。Windows 10からのアップグレードにはMoSetupキーの作成、クリーンインストールにはLabConfigキーの作成が効果的です。
Rufusを使った方法は、レジストリ編集が不要で最も簡単にシステム要件を回避できます。24H2・25H2では追加のレジストリ設定が必要になる場合がありますが、基本的な回避方法は引き続き有効です。
ただし、システム要件回避にはセキュリティリスクやサポート対象外になるというデメリットがあることを忘れないでください。可能であれば、TPM 2.0搭載の正規対応ハードウェアへの移行を検討することをお勧めします。
